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昔から、「腹8分目。」がよいとされます。
「・・・そんなこと判っているよ。」と皆さん思っていませんか?
では、「よく咬むと太らない。」は○か×か?
答えは○。
しかし、この単純な答えに到るまで、世の中では多くの紆余曲折があったのです。
約100年前のアメリカ人、 ホレス・フレッチャー は、美食家。
運動もしないでおいしいものを食べてばかりいると、40歳の時には、体重100キロになってしまいました。
ある時、病院へ行くと色んな病気が見つかり、生命保険会社にも、医者にも見離されてしまいました。
それをどうにかしようと、彼は自分で考えて「おなかがすいた時だけ食べる」「咬めるだけ多く咬んで食べる」「食事の時はおおいに楽しむ」ことを実践しなんと5ヶ月で30キロのダイエットに成功しました。
彼は50歳の時には、若者に混じって300キロのサイクリングをしても平気というくらい屈強になっていたそうです。
やがて、その話は、米国医師ジュエイの「咀嚼」という本にフレッチャイズム(1913年)として取り上げられベストセラーになりました。
しかし、100年前の医学は、フレッチャーが何故、「出来るかぎり多く咀嚼する」ことで痩せたのか 解明できなかったのです。
やがて、その言葉は次第に忘れられてしまいました。
時は流れて1940~50年ころ、ネコの脳に電気刺激を与えた実験から
「満腹中枢」「摂食中枢」が見つかり、血糖値がその調節に関与している
「糖定常説」が世に知られるようになります。
満腹中枢が興奮して食べることをやめるには、血糖値があがって満腹感を得られる必要があります。
それまでのタイムラグがあるために、早食いは過食につながり、太る原因にだと考えられていました。
その後、1993年、
大分大学、吉松教授らが論文で、摂食中枢の調節がヒスタミンによって行なわれるという「神経ヒスタミン説」を発表し脚光を浴びたのですが、
翌94年、J.M.フリードマンによって有名な「レプチン」(これが満腹中枢を刺激してヒトは満腹感を得られる)を脂肪細胞から分離され状況は一変してしまいました。
製薬会社は痩せ薬になるのではと、レプチン様薬理作用のある薬の開発に躍起になり、吉松先生の理論は世界から注目されないままとなりました。
さて、「痩せ薬」の開発はどうなったか?というと、実際のところ身体の仕組みは複雑で、プラスの作用をする物質があれば必ずマイナスの作用をする物質があります。
レプチン様薬剤は開発され実験されても思ったほど効果がないことが判りました。
その理由は、レプチンの反対の効果を持つグレリンという物質の発見で説明がつきました。
血中のレプチン薬が増えると身体はグレリンを分泌してその作用を弱めるのです。
現在も、アディポネクチンなど、痩せ薬というものは後を絶たずに出てきます。
しかし、どうも完全なものはないようです。
そこで、忘れられていた「神経ヒスタミン説」がまた脚光を浴びてきました。
このヒスタミン説は別に否定されていた訳ではないのです。
現在、
「神経ヒスタミンは、脳の視床下部から放出される物質で、食欲を抑え、体脂肪分解を促進する。
そして、そのヒスタミンは咀嚼しなければ活性化されず食欲をコントロールできなくなる。」
つまり「よく咀嚼すると痩せる」ことが、事実だと解りました。
大分大学の吉松博信先生は、この神経ヒスタミンの研究をずっと続けてこられていました。前述のフレッチャイズムの説明も これならできます。
日本の厚労省は、みなさんご存知の8020運動に続き、メタボ対策として、よく咬んで食べることが生活習慣病予防になることから「噛ミング30(かみんぐさんまる)運動」を展開していくことを平成21年7月13日発表しました。
この紙面で紹介できなかった色々な検証の結果、一口30回咬んで食べることで、「神経ヒスタミン」効果をうながし少ない食物で 満腹感を得られ、体脂肪分解を促進し、体型がメタボにならないように維持できることが判ったからです。
しかし、この噛ミング30運動は、8020運動ほど盛り上がりません。
そう、平成21年7月21日 麻生太郎総理大臣は衆議院を解散し、総選挙へと政局は混乱、自民党惨敗 → 民主党政権樹立となり、日本の国は、個人のメタボリック対策や太らないコツなどという話題どころじゃなくなっています。
いや、我々が知らないだけで、「噛ミング30」はどこかにしっかりと根付き始めているかも知れません。
いずれにしても、メディアは視聴率が取れそうなものしか報道しませんから困ったものです。
この、21世紀は新たな激動の時代だと感じます。その変化の速さについて行くのは大変です。
自分自身の健康を維持し、変化に対応し生き抜くために、一口30回咬むと肥満治療になること、このことはどうか覚えておいて欲しいと思います。
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