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カリオロジーは、日本語で「ウ蝕学」という意味ですが、ウ蝕予防のための学問と思って戴いていいと思います。日本でも随分ウ蝕が減ってきたのはいいことです。
さて、下の図は、カリオグラムと言ってカリオロジーに基づいて、「新しいムシ歯」が検査後1年間に出来る可能性がどれだけあるか示したものです。
このソフトは、カリオロジーの世界的権威であるスウェーデン、ルンド大学のダグラス・ブラッタール教授が開発しました。
勿論、ソフトが絶対正確という訳ではなくあくまでも参考資料として説明するためのものです。
この図には縄文時代の子供を想定してデータを入れてみました。
つまり、まだムシ歯になった経験なし、歯磨きの習慣なし、食事の内容は簡単な調理をするか自然界にあるものをそのまま食べるかだと思います。
飲食回数は当時、朝夕の2回です。
ハミガキの習慣はなく、プラークは繊維性食物を食べる時の自浄作用のみで付き放題だと仮定しました。
そのデータを右の0-3の数字で評価して入力すると結果はどうでしょうか?下図を見てください。
これから1年間で、ムシ歯を避ける可能性71%と出ました。
歯磨きしなくても7割は新しいムシ歯にならないのです。
この0-3の評価方法は下図の通りです。
ちょっと、学問的ですが正確な評価のためなので仕方ありません。
興味がある方は読んでみてください。
実際、縄文時代には子供のムシ歯はほぼなかったと考えられています。
その当時、ムシ歯はお年寄りの病気でした。
つまり、加齢で歯周病が進み歯の根元に象牙質が露出してくるとそこがムシ歯になる訳です。エナメル質は簡単にはムシ歯にならなかったのです。
この象牙質う蝕を「古代う蝕」とも言うそうです。
"う蝕経験" う窩、充填、う蝕による喪失歯を含む過去のう蝕経験、う蝕が過去1年の間にできた場合には、充●数が低くてもスコア3をつけます。 0=う蝕も充填もなし 1=普通より良好な状態 2=該当年齢として普通 3=普通より多い "関連全身疾患" 全身疾患や全身状態はう蝕に関連します。 0=疾患なし 1=疾患やその状態が軽い 2=重度で長期間 |
"食事内容" 食物、特に醗酵性炭水化物を含む食物のう蝕性をあらわします。 醗酵炭水化物の内容: 0=非常に少ない(lactobacillus数が一番低い) 1=少ない、'う蝕原生でない'食事 2=中程度 3=多い、適正でない食事 "飲食頻度" "普通の日"一日にとる食事や間食の回数を表します。 1日の飲食頻度、間食を含む: スコア0:0 ? 3回摂取 スコア1:4 ? 5回摂取 スコア2:6 ? 7回摂取 スコア3:7回より多く摂取 |
"ブラーク量" 例えばSilness-Loeのブラークインデックス(PI)による口腔衛生の評価。歯間部ブラークの除去が困難であるような叢生歯も、考慮に入れなければならない(もし頬側の歯面がブラークフリーであったとしてもPIスコアを高くつけることができる)。 0=非常に良好な口腔衛生、ブラークインデックスP1I=0 1=良好な口腔衛生、P1I=1 2=あまり良くない口腔衛生P1I=2 3=悪いP1I=3 "Mutans streptococci" 例えばStrip mutansテストなどによる唾液中のMutans streptococci(Streptococcus mutans, Streptococcus sobrinus)のレベル。 0=Strip mutansクラス0 1=Strip mutansクラス1 2=Strip mutansクラス2 3=Strip mutansクラス3 |
"フッ化物プログラム" にどのようなフッ化物を継続的に使用しているかを表します。 0=フッ化物プログラムを"最大限"利用用 1=歯磨剤以外のフッ化物の利用はまれ 2=フッ化物の入った歯磨剤のみ、その他はなし 3=フッ化物は使用しない、歯磨剤もフッ化物なし "唾液分泌速度" 例えばパラフィン刺激などによる唾液の分泌量を、毎分あたりのmlで表します。 (以下は成人用の値) 0=正常な唾液分泌速度 1=低い、刺激唾液が0.9-1.1ml/分 2=低い、刺激唾液が0.5-0.9ml/分 3=非常に低い、無唾液症,<0.5ml/分,長期間> |
"唾液緩衝能" 例えばDentobuffテストなど使っての酸に対する唾液の緩衝能を表します。 0=適正,Dentobuffが青 1=減少,Dentobuffが緑 2=低い,Dentobuffが黄色 "臨床的判断" 術者の見解, '臨床的判断'を表します。 0=上記のデータやテストが示すよりも良好である 1=通常設定 上記のデータが示しているものと一致 2=データやテスト結果よりもリスクが高い 3=非常に高いリスク、術者はう蝕の発生を |
紙面でこのソフトの全てを説明することは不可能だと思いますが、注目すべきはデータ入力項目だと思います。
全部で10項目あるムシ歯の原因の中に、生活習慣で変えられるものがいくつも存在します。
それぞれ重要な要因ですけれど新しいムシ歯の形成にどれがどれくらい重要か知りたくありませんか?
歯医者へ行くと「ちゃんとハミガキしないとムシ歯になるよ。」と言われるけど本当でしょうか?
「僕のお父さんは全然ハミガキしていないのにムシ歯は1本もないよ。」
なんて話を聞いたことないですか!
少し種明かしをしてみましょうか。
では次に、 ムシ歯の温床のような食生活をし始めたばかりの現代の子供の状態を想定してあと一年以内に新しいムシ歯が出来る可能性をグラフで表してみました。
●まだ離乳食が始まったばかりで歯は磨かせて貰えません。
その時、発酵食品などを哺乳瓶に入れて飲みながら昼寝している乳児を想像してみてください。
いわゆる、「哺乳瓶う蝕」が簡単に出来上がることが判って貰えますか?
この子供を押さえつけてお母さんが一生懸命ハミガキをしたとします。
ムシ歯になる可能性は、どれだけ減るかみてみましょう!!
●プラーク量を、0(ゼロ)にしてみてもムシ歯を避ける可能性は、6%しか上がりません。
なぜでしょうか??
答えは上の通り。
手付かずのプラークに糖分が間断なく与えられたら、すぐにムシ歯になる事は理解できると思います。
「じゃあ、ハミガキは無駄なの?」と悲観しないで下さい。ハミガキは重要です。
それについては別の項でお伝えする事として、ここでは最も効率的なムシ歯予防であるフッ化物の利用について述べます。
食事内容、飲食頻度に関係なく上手にフッ化物を利用すればムシ歯は下の図のように予防できます。
●上のお子さんにフッ化物プログラムを取り入れました。
具体的には、フッ素洗口を励行して貰いました。
●更に、食事に気をつけて食べ物の摂取頻度等に気をつければカリエスリスクを大幅に下げることが出来ます。
現在では、ミュータンス菌の除菌なども可能となり、いよいよムシ歯はコントロール可能な疾患の仲間入りをしたと言っていいでしょう。
ただし、プラークコントロールや食事回数や食事内容のリスクを正しく学び、実践していることが前提となるのは理解して戴きたいと思います。
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