トップページ < 親知らずの弊害
縄文時代の平均的日本人は、切端咬合という上の前歯と下の前歯が約180度の角度(つまり一直線)で咬合するのが当たり前でした。
堅い食物をバリバリ噛み砕くには上下の歯の交わる角度は180度が一番力のロスがないからです。勿論、親知らずまでの上下32本がガッチリ咬んでいるのが普通でした。
ところが食物を調理して食べるようになって、現代人では鋏状咬合といわれる咬み合わせが普通になってきました。
(左写真)、今ではこれが正常咬合ということになっています。
下顎の歯が上顎よりも少し後ろ側または内側にあるのが正常なのです。
縄文時代ほど下顎が成長しなくてもちゃんと食物を咀嚼できるようになったということです。
この顎の小さい傾向は、日本人の食生活が激変した昭和以降では特に顕著に現れているようです。
三世代に渡るご家族を診療するとだんだん顎が細くなるように感じます。
歯科医師をしている経験上の話ですが、明治生まれの患者さんの歯は歯科用切削器具がすぐ切れなくなるほど硬い人が結構いました。
器具の性能のせいかも知れませんが・・・。
また、ご家族みんなを診ていると親子の歯牙の形や元々の骨格の傾向に遺伝というものを強く感じます。
しかし、遺伝とはまったく関係なく世代間での食生活、後天的要素の違いでお口の中の様子が全然違ってくることも感じます。
その答えは生活様式が変わったことに原因があることは間違いないです。
畳から椅子の生活へ、TVゲームをする姿勢の悪さ、外で遊ばないため筋力の発達不足といった点について一人一人の問題点を早期に発見、丁寧にアドバイスしていくことが大事ではないでしょうか。
では、下のレントゲン写真を見てください。ごく普通の女子中学生です。写真赤丸は、上顎の親知らず
(第3大臼歯 = 前から数えて8番目の歯)は、右側で見当たりません。これを、先天性欠如といいます。退化してなくなったのです。
親知らずならまだいいですが、最近は小臼歯あたりや下顎前歯あたりにも先天性欠如はよく見かけます。困ったことです。
さらに、この患者さんは左下の後ろから2番目の歯(第二大臼歯=下写真赤丸の真ん中の歯)が手前の歯につっかえて萌出不能になっています。
これは下顎の骨体の中で現在出来始めている親知らずの影響で第二大臼歯が手前に傾斜したことが原因のひとつだと考えられます。
これでは左側の上下第二大臼歯がガッチリ咬んで咬合を支えることが出来ません。
それどころか咬む力(咬合支持)に左右差が生まれ、それが下顎の左右非対称に繋がる場合もあります。
このように現代では、親知らずは後から生えてきて咬み合わせを乱す悪者になることが非常に多く歯列矯正治療では小中学生のうちに下顎の親知らずを抜いたり、上顎では第二大臼歯を早期に抜歯して歯列を整えて、親知らずを第二大臼歯の位置に誘導することもよくあります。
親知らずに代表される奥歯の咬み合わせの平面の歪みや乱れは、一度ほぼ完成した咬合に悪影響を与え、顎関節等にもダメージを与えることが結構あります。
中学生頃から顎が痛む、カクカクする、音がする、口が開かないなどの微妙な症状を訴える生徒が増えます。これがその兆候なのです。心配でしょうが、その多くは自然に治まります。
これは、顎が成長過程で歯の萌出によって咬合が変わっていくことに適応しているからです。
そして適応しきれない人が患者として歯科医院や一部お医者さんを受診することになります。
その歯列の乱れは、自分ではほとんど気付きません。
はじめは痛みはありません。そして元に戻すことは簡単ではありません。
顎の位置まで変わっている可能性があるからです。
根本的治療は大変な場合が多々あります。
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